建築物の省エネ性能を評価する手続きには、
多くの種類が存在します。
中には、税制優遇や補助金など、
金銭面でのメリットを得られる手続きも存在します。
この記事を読むと、以下の内容について、理解することができます。
- 省エネ性能を評価する手続きにはどのようなものが存在するのか
- その手続きは必要なのか、任意で行うものなのか
- 手続きをすることによるメリット・デメリットはあるのか
各手続きの特徴とメリット・デメリットを押さえて、
顧客のニーズに応じて使い分けましょう。
省エネ性能を評価する主な手続き
建築物の省エネ性能を評価する主な手続きは、以下の表のとおりです。
- 住宅性能評価
- フラット35
- 長期優良住宅
- BELS
- 省エネ適合性判定
それぞれの手続きについて、解説していきます。
住宅性能評価(対称:住宅)
出展:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「新築住宅の住宅性能表示制度について」
住宅の性能を10の項目に分けて、評価をする任意の制度です。
評価を受けることができる項目は、以下のとおりです。
- 構造の安全性
- 火災時の安全性
- 劣化対策
- 維持管理更新への配慮
- 温熱環境(外皮性能・一次エネルギー消費性能といった省エネ性能)
- 空気環境
- 光・視環境(採光の確保)
- 音環境
- 高齢者等への配慮
- 防犯
図面審査により住宅の性能を評価する設計住宅性能評価と、
工事された住宅の性能を検査により評価する建設住宅性能評価の
2つの手続きに分類され、それぞれの手続きにおいて、
「設計住宅性能評価書」「建設住宅性能評価書」を受け取れます。
メリット
- 住宅の様々な性能を等級により可視化できる
- 構造の安全性が高い住宅(耐震等級2や3)は地震保険の割引を受けられる
- 温熱環境(省エネ性能)が良好な住宅に対して補助金が交付される制度がある
構造の安全性(耐震等級)や、
温熱環境(省エネ性能)を、高めることにより、
保険料の割引や補助金を受けることができる点が、
主なメリットとなります。
デメリット
- 評価を受けるための設計や申請の費用がかかる
- 審査項目が多く、設計や準備に手間を要する
- 設計評価が完了しないと工事に着手できない
実務者の立場から見ると、
手間がかかることが大きなデメリットとなります。
少なくとも、構造の安全性、劣化対策、
維持管理更新への配慮、温熱環境(省エネ性能)、
の4つの項目について、評価する必要があるため、
準備に係る時間は、手続きの中でも特に多いです。
フラット35(対称:住宅)
出典:住宅金融支援機構「【フラット35】技術基準・検査ガイドブック」
住宅ローンの金利を35年間固定できる任意の制度です。
金利の固定を受けるための基準は、以下のとおりです。
- 基準項目(接道、住宅の規模、居住室の数、戸建型式)
- 断熱性能(断熱等性能等級4以上)
- エネルギー消費性能(一次エネルギー消費量等級4以上)
- 住宅の構造(耐火構造又は耐久性基準)
- 配管設備の点検措置(点検口などの設置)
手続きの流れは以下のとおりです。
- 工事を始める前の図面審査
- 工事中の中間検査
- 工事完了時点の竣工検査
これらの手続きを経て、金利の固定を受けることができます。
メリット
- 金利が上がる心配がない
- お金を借りやすい
デメリット
- 市場金利が下がっても金利が変わらない
- 変動金利に比べて、契約当初の金利が高い可能性がある
また、通常プランよりさらに金利を低くできる
「フラット35S」というプランもあります。
例えば、省エネ性能による場合、
以下のような性能が必要となります。
- 断熱性能(断熱等性能等級5以上)
- エネルギー消費性能(一次エネルギー消費量等級5以上)
この他、ZEH水準の性能を持たせたり、
耐震性能を向上させるなど、
金利を低くするためのプランが複数存在します。
長期優良住宅(対称:住宅)
出典:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「認定制度概要パンフレット(新築版)」
金利優遇を受けたり、税制優遇を受けることができる任意の制度です。
外皮の性能の他、エネルギーの消費性能の他、
構造耐力、耐久性、維持管理のしやすさについて、
基準が定められています。
図面の審査により長期優良住宅であることの
認定を受けることができます。
認定を受けた住宅は、維持保全の状況について記録を作成し、
保存することが求められます。
メリット
- 住宅ローンの金利を引き下げることができる
- 所得税を引き下げることができる
- 地震保険の割引きを受けることができる
デメリット
- 省エネ性能の他、構造や耐久性に関する基準があり、設計や準備に費用を要する
- 手続きが完了しないと、工事に着手できない
- 維持保全の状況について記録を作成しなければならない
維持保全の記録を作成しなければならないことが、
他の手続きと最も異なる点となります。
BELS(べるす、対称:住宅・非住宅)
出典:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「建築物省エネルギー性能表示制度とは」
【 建築物省エネルギー性能表示制度とは | 建築物省エネルギー性能表示制度について | 一般社団法人 住宅性能評価・表示協会 (hyoukakyoukai.or.jp) 】
建築物のエネルギーの消費性能を評価書により
可視化することができる任意の制度です。
図面や計算書の審査により、建築物のエネルギー消費性能を評価します。
メリット
- 建築物の省エネ性能を可視化できる
- 「ZEH(ぜっち)」や「ZEB(ぜぶ)」であることを示すことができる
- 工事を着手した建物や、完成した建物を評価することができる
デメリット
- 金利や税制優遇を受けることはできない
「ZEH(ぜっち)」や「ZEB(ぜぶ)」とは、
年間のエネルギーの収支をゼロにすることを目指した
建築物のことを指します。
ZEHやZEBの基準を満たす建築物は、
さまざまな補助制度の対象となります。
都道府県や各種団体が運営する、
ZEHやZEBの計画に対する補助事業も、多く存在します。
これらの補助金を受けるために、BELS評価書が必要になるケースが多いです。
省エネ適合性判定(対称:2023現在は非住宅)
現在、中規模以上(300㎡以上)の非住宅建築物に対し、
義務付けられている手続きです。
国が定める基準値より、
計画する建物のエネルギー消費量が、
基準値より少ないことを、
図面と計算書により審査をします。
メリット
- 計算書をBELS等の手続きに活用することができる
デメリット
- 手続きが完了しないと、工事に着手できない
手続き完了を示す「省エネ適合判定通知書」がないと、
確認済証が交付されないため、
省エネ適判の手続きが完了しないと、
工事に着手できないことになります。
2024年には、大規模(2,000㎡以上)の非住宅の基準が引上げになること、
2025年には、小規模(300㎡未満)の非住宅建築物と全ての住宅が、
省エネ適判の対象となることが予定されています。
(一部、省エネ適判の対象とならない例外もあります。)
まとめ
省エネ性能を評価する手続きについて紹介しました。
要点は以下のとおりです。
- 省エネ適合性判定は義務制度、他の手続きは任意の制度
- 長期優良住宅など、手続きが完了しないと工事に着手できないものがある
- 金利優遇を受けたいなら長期優良住宅がお勧め
- 金利固定を受けたいならフラット35がお勧め
各手続きの特徴とメリット・デメリットを押さえて、
顧客のニーズに応じて使い分けましょう。
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- 非住宅(事務所・物販店舗等):6万円~ ※モデル建物法、規模により変動
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