給湯設備の保温仕様と節湯器具とは?省エネ判定員が解説

給湯設備の一次エネルギー消費量の計算において

給湯機の能力値以外に影響を及ぼす要素があります。

 

これらは、能力値ほど一次エネルギー消費量に影響は及ぼしませんが、

エネルギーの消費効率を上げるためには必要不可欠な要素です。

 

この記事を読むと、以下のようなことを知ることができます。

  • 一次エネルギー消費量に影響を及ぼす能力値以外の要素
  • それらの要素(保温仕様・節湯器具)の評価方法
  • 評価の際の注意事項

給湯設備の能力値以外の要素マスターして、楽に申請手続きを突破しましょう!

 

一次エネルギー消費量について知りたい方は、こちらの記事でご確認いただけます。

関連記事

近年、省エネ性能の高い建築物が大きな注目を集めています。 今回は、省エネ性能の1つである一次エネルギー消費量について解説します。   この記事を読むと、一次エネルギー消費量とは何か? 一次エネルギー消費量の[…]

給湯設備の主要な評価項目については、こちらの記事からご確認いただけます。

関連記事

2025年4月から、すべての建築物に省エネ基準への適合義務が課せられます。 このことにより、建物の工事着手前に、省エネ基準への適合審査が必要となります。   この記事を読むと、非住宅建築物で最も主流であるモデル建[…]

一次エネルギー消費量に影響を及ぼす能力値以外の要素

能力値以外で、一次エネルギー消費量に影響を及ぼす要素は以下のとおりです。

  • 配管の保温仕様
  • 節湯器具

配管の保温仕様

給湯配管から熱が逃げることによる給湯機のエネルギー消費のロスを減らすため、

配管を断熱(保温)することを指します。

ロックウール断熱材などで給湯配管を保温することにより、

熱損失が減り、エネルギー消費の効率が向上します。

節湯器具

使用するお湯の量を節約することで、

給湯機のエネルギー消費を抑えることができる器具のことを指します。

自動給湯栓などが節湯器具に該当します。

保温仕様

保温仕様は「モデル建物法入力マニュアル」で定められた項目から選択します。

出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「モデル建物法 入力マニュアル」

modelv3_manual_20240401.pdf (lowenergy.jp)

保温仕様とその条件は、以下の表のとおりです。

保温仕様の選択肢 その条件
保温仕様A ・呼び径が 32 未満の配管:保温材(※)の厚さが 30 ㎜以上
・呼び径が 32 以上の配管:保温材(※)の厚さが 40 ㎜以上
※保温材はJIS A 9504 のロックウールもしくはグラスウールの保温筒とする。
【公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和4 年版の冷温水管の保温材の厚さに従ったもの】
保温仕様B ・呼び径が 32 未満の配管:保温材(※)の厚さが 20 ㎜以上
・呼び径が 32 以上 65 未満の配管:保温材(※)の厚さが 30 ㎜以上
・呼び径が 65 以上の配管:保温材(※)の厚さが 40 ㎜以上とした仕様
※保温材はJIS A 9504 のロックウールもしくはグラスウールの保温筒とする。
【公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和4 年版の蒸気管の保温材の厚さに従ったもの】
保温仕様C ・呼び径が 100 未満の配管:保温材(※)の厚さが 20 ㎜以上
・呼び径が 100 以上の配管:保温材(※)の厚さが 25 ㎜以上とした仕様
※保温材はJIS A 9504 のロックウールもしくはグラスウールの保温筒とする。
【公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和4 年版の給湯管の保温材の厚さに従ったもの】
保温仕様D ・呼び径が 100 未満の配管:保温材(※)の厚さが 20 ㎜以上
・呼び径が 100 以上の配管:保温材(※)の厚さが 25 ㎜以上とした仕様
※保温材はJIS A 9504 のロックウールもしくはグラスウールとする。
【公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和4 年版の給湯管の保温材の厚さに従ったもの】
裸管 上記以外の場合
  • 配管径によって求められる保温厚さが異なること
  • A~Cの仕様に応じて保温材の厚さが異なること
  • 保温仕様AからCの保温材は保温筒の指定があること

これらが保温仕様を評価する際のポイントとなります。

 

また、モデル建物法入力マニュアルには、この他の選択肢もあります。

  • 保温仕様2または3
  • 保温仕様1

これらの選択肢は「改定前の選択肢」と呼ばれ、

特別な事情、やむを得ない事情がある場合を除き、

入力しないことが求められています。

表中の選択肢で保温仕様を評価しましょう。

専用樹脂配管の取り扱い

以下の条件を満たす専用樹脂配管は、

保温されていない場合でも「保温仕様D」を選択することができます。

  • 自動水栓水洗一体型電気温水器(元止め式)に付属するもの
  • 長さが数十㎝程度のもの

節湯器具

節湯器具も保温仕様と同様「モデル建物法入力マニュアル」で定められた項目から選択します。

節湯器具の種類とその条件は、以下の表のとおりです。

節湯器具の選択肢 その条件
自動給湯栓 ・洗面に設置され、使用に合わせて自動で給水する給湯栓で電気的に開閉し、手を遠ざけると自動で止水するもの
※公衆浴場などにある、一定時間お湯を吐出した後に自動で止水する水栓については「自動給湯栓」とはみなさない。
節湯B1 浴室シャワー水栓において、「小流量吐水機構を有する水栓の適合条件」を満たす湯水混合水栓。
※小流量吐水機構を有する水栓の条件
節湯水栓の判断基準に定められた試験方法にて吐水力を測定し、その値が次の条件に適合すること。
・ 流水中に空気を混入させる構造を持たない:0.60 N 以上
・ 流水中に空気を混入させる構造を持つ  :0.55 N 以上
上記以外
※2バルブ水栓については、上記仕様の有無にかかわらず、「無」となる
  • 給湯の用途によって選択できる節湯器具の種類が異なること
  • 2バルブ水栓の場合は節湯器具を評価できないこと

これらが節湯器具を評価する際のポイントとなります。

 

実務上は、圧倒的に自動給湯栓を採用するケースが多いです。

節湯B1の条件は少し難しい内容になるため、別の機会にお話します。

まとめ

今回は、給湯設備の保温仕様と説諭器具について解説しました。

  • 保温仕様と節湯器具は、給湯設備のエネルギー効率を上げるための要素
  • 保温仕様は配管径・断熱材厚さ・断熱材種類で決定される
  • 保温仕様の選択肢の中には、推奨されていないものが存在する
  • 節湯器具は2種類。給湯用途によっては採用できないものがある
  • 2バルブ水栓の場合、節湯器具を評価することはできない

省エネ計算の依頼はたいら建築相談所へ

省エネ計算で不明な点・不安な点がございましたら、たいら建築相談にご相談ください。

以下の料金【※一例】で、省エネ計算を承ります。

  • 戸建住宅(外皮計算・一次エネ計算):6万円~
  • 共同住宅(外皮計算):5万円~
  • 非住宅(工場・倉庫):4万円~ ※モデル建物法、規模により変動
  • 非住宅(事務所・物販店舗等):6万円~ ※モデル建物法、規模により変動
  • 非住宅(病院・福祉施設等):7万円~ ※モデル建物法、規模により変動

以下のサイトから連絡を取ることができます。

まずはお気軽にお声がけください。

次回の記事

次回は、非空調コア部を算定する際のケーススタディを紹介します。

お楽しみに!!

最新情報をチェックしよう!