2025年の10月1日、モデル建物法(小規模版)が現行版の
一次エネルギー消費量計算プログラムとして使用できるようになりました。
モデル建物法(小規模版)は、まだよく知らない人も多いと思います。
この計算方法は、床面積が300㎡未満の小規模非住宅建築物の省エネ計算において、最も簡易な計算方法となります。
この記事を読むと以下の内容を知ることができます。
- モデル建物法(小規模版)の基本情報入力の特徴
- モデル建物法(小規模版)の開口部入力の特徴
- モデル建物法(小規模版)の断熱仕様入力の特徴
モデル建物法(小規模版)の特徴を押さえて、2025年度以降の小規模非住宅の省エネ計算に活用しましょう。
モデル建物法(小規模版)とモデル建物法(通常版)の違いについてはこちらの記事でご確認いただけます。
法改正により、2025年4月から、すべての非住宅建築物に対して省エネ基準への適合義務が課せられます。 これにより一部の例外を除き、建築物の工事着手前に省エネ適判の手続きをしなくてはなりません。 特に、床面積が300㎡未満の非住宅[…]
モデル建物法(小規模版)の基本情報の入力
基本情報入力の特徴は、以下の通りです。
- 階高の合計の入力が不要
- 外周長さの入力が不要
- 非空調コア部の判断が不要
なお、モデル建物法(小規模版)において、基本情報は「計算書様式SA 基本情報入力シート」に入力します。
出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「モデル建物法(小規模版)入力マニュアル」
モデル建物法(通常版)の「様式A 基本情報入力シート」に対応するシートです。
階高の合計の入力が不要
階高の合計とは、スラブレベル間またはフロアレベル間の高さを指します。
モデル建物法(小規模版)では「様式SA 基本情報入力シート」に、階高の合計の入力欄がありません。
そのため、モデル建物法(通常版)より計算が容易になります。
階高について知りたい方は、こちらの記事でご確認いただけます。
非住宅建築物の省エネ性能には、外皮性能の基準はありません。 しかし、省エネ性能を評価するためには、 外皮の情報を計算プログラムに入力する必要があります。 この記事を読むと非住宅建築物の外皮とはどこを指す[…]
外周長さの入力が不要
外周長さとは、省エネ計算をする建物の外周部の長さを指します。
モデル建物法(小規模版)では「様式SA 基本情報入力シート」に、外周長さの入力欄がありません。
そのため、モデル建物法(通常版)より計算が容易になります。
非空調コア部の判断が不要
非空調コア部とは、「各階で平面上の同一位置にある非空調部分」を指します。
モデル建物法(小規模版)では「様式SA 基本情報入力シート」に、外周長さの入力欄がありません。
そのため、モデル建物法(通常版)より計算が容易になります。
非空調コア部について知りたい方は、こちらの記事でご確認いただけます。
「非空調コア部」をご存知ですか。 モデル建物法を活用して、 省エネ性能の計算をされた方の多くが、 「非空調コア部の入力が分かりづらい」 と感じることだと思います。 この記事を読むと、以下の内[…]
非住宅の省エネ計算において、「モデル建物法」は最も活用されている計算方法です。 このモデル建物法を活用した省エネ計算において、 つまづきやすいポイントが「非空調コア部」となります。 この記事を読むと以下[…]
モデル建物法(小規模版)の開口部の入力
開口部入力の特徴は、以下の通りです。
- 非空調室にある開口部は評価対象外
- 評価対象となる開口部は1か所のみ
- 開口部の寸法の入力が不要
なお、モデル建物法(小規模版)において、開口部の仕様は「計算書様式SB-1 開口部仕様入力シート」に入力します。
出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「モデル建物法(小規模版)入力マニュアル」
モデル建物法(通常版)の「様式B-1 開口部仕様入力シート」に対応するシートです。
非空調室にある開口部は評価対象外
モデル建物法(小規模版)では空調室にある開口部の内、代表的なものの仕様を評価するルールとなっています。
そのため、非空調室にある開口部は、評価対象外となります。
モデル建物法(通常版)に比べ、開口部の入力が大幅に減る一方、入力する開口部の選定のルールを覚える必要があります。
空調設備の計画を踏まえ、空調の対象となる空調室の代表的な開口部のみを評価しましょう。
評価対象となる開口部は1か所のみ
モデル建物法(小規模版)では所定のルールに基づいて、評価対象となる開口部を1か所のみ評価します。
モデル建物法(通常版)の「様式B-3 外皮仕様入力シート」のように、建具の配置を入力する必要はありません。
評価対象となる開口部を選定するルールは以下の通りです。
- 空調室の開口部を評価する
- 外壁に設置される窓の中で最も面積が大きいものを評価する
- 連窓のものは1つの開口部として面積を判定する
- 同一面積のものが複数ある場合、ガラスの断熱性能が最も低いものを評価する
そのため、モデル建物法(通常版)に比べ、開口部の入力が大幅に減らせます。
なお、ガラスの断熱性能については、「モデル建物法(小規模版)入力マニュアル」でご確認いただけます。
出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「モデル建物法(小規模版)入力マニュアル」
開口部の寸法の入力が不要
モデル建物法(小規模版)において、開口部の評価方法は以下の3パターンです。
- 建具の種類とガラスの種類を選択する方法
- 建具の種類を選択し、ガラスの熱還流率と日射熱取得率を入力する方法
- 建具+ガラスの熱取得率と日射熱取得率を入力する方法
いずれのパターンにおいても、開口部の寸法を入力することはありません。
そのため、モデル建物法(通常版)に比べ、開口部の入力が大幅に減ります。
モデル建物法(小規模版)の断熱仕様の入力
断熱仕様入力の特徴は、以下の通りです。
- 評価対象となる部位は外壁と屋根(天井)の2種類
- 部位毎に代表的な断熱仕様を1種類評価する
- 部位の外皮面積の入力が不要
なお、モデル建物法(小規模版)において、断熱仕様は「計算書様式SB-2 断熱仕様入力シート」に入力します。
出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「モデル建物法(小規模版)入力マニュアル」
モデル建物法(通常版)の「様式B-2 断熱仕様入力シート」に対応するシートです。
評価対象となる部位は外壁・屋根(天井)の2種類
モデル建物法(小規模版)では小規模非住宅建築物の外皮の内、外壁と屋根(天井)のみを評価します。
そのため、外気に接する床の断熱仕様は、評価対象外となります。
モデル建物法(通常版)に比べ、外気に接する床や代表的でない断熱仕様の入力を減らせます。
部位毎に代表的な断熱仕様を1種類評価する
モデル建物法(小規模版)では所定のルールに基づいて、部位毎に代表的な断熱仕様を1種類評価します。
モデル建物法(通常版)の「様式B-2 断熱仕様入力シート」のように、複数の断熱仕様を入力する必要はありません。
評価対象となる断熱仕様を選定するルールは以下の通りです。
- モデル建物を構成する外皮の内、最も面積が大きい外壁や屋根(天井)を評価する
- 外壁の面積の比較は、開口部を含まない面積で行う
- 非空調室の外皮も外壁や屋根を判定する際の比較対象となる
そのため、モデル建物法(通常版)に比べ、断熱仕様の入力を減らせる一方、
入力する断熱仕様の選定ルールを覚える必要があります。
代表的な外壁を選定する際の面積比較には開口部を含まないことに注意しましょう。
部位の外皮面積の入力が不要
モデル建物法(小規模版)では、評価対象である外壁や屋根(天井)の面積を評価する項目がありません。
そのため、「様式B-3 外皮仕様入力シート」に対応する入力シートが存在しません。
計算結果は大雑把になりますが、外皮面積を算定する必要がないため、
大幅に計算図書の作成に要する時間を削減することができます。
まとめ
今回は、モデル建物法(小規模版)の特徴(外皮編)について解説しました。
- 階高の合計、外周長さ、非空調コア部の入力が不要
- 外壁と屋根(天井)の代表的な断熱仕様のみを評価する
- 外皮面積の算定が不要
- 建具も代表的な建具使用のみを評価する
- 代表的な仕様を選定するルールがある
省エネ計算の依頼はたいら建築相談所へ
省エネ計算で不明な点・不安な点がございましたら、たいら建築相談にご相談ください。
以下の料金【※一例】で、省エネ計算を承ります。
- 戸建住宅(外皮計算・一次エネ計算):6万円~
- 共同住宅(外皮計算):5万円~
- 非住宅(工場・倉庫):4万円~ ※モデル建物法、規模により変動
- 非住宅(事務所・物販店舗等):6万円~ ※モデル建物法、規模により変動
- 非住宅(病院・福祉施設等):7万円~ ※モデル建物法、規模により変動
以下のサイトから連絡を取ることができます。
- たいら建築相談所 :コンタクト (tairasoudan.com)
- ココナラ :たいら建築相談所_省エネ特化の一級建築士 (coconala.com)
- スタジオアンビルト:たいら建築相談所_建築法令専門家 [STUDIO UNBUILT]
- クラウドワークス :たいら建築相談所 (crowdworks.jp)
まずはお気軽にお声がけください。
次回の記事
次回は、モデル建物法(小規模版)のポイント(設備編)を解説します。
お楽しみに!