評価対象外が存在する事例は?ケーススタディで省エネ判定員が解説

非住宅建築物の省エネ計算において、最も主流となる計算方法である

モデル建物法においては、評価対象外となる部分や設備が存在します。

今回は、この評価対象外について、ケーススタディ形式で解説いたします。

 

評価対象外となる事例をマスターして

非住宅の省エネ計算をストレスなく進めていきましょう。

 

評価対象外の概要については知りたい方は、こちらの記事でご確認いただけます。

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非住宅の評価対象外部分

 

評価対象外となる部分

モデル建物法において計算の評価対象外となる部分は、2種類あります。

  • 標準的な使用条件を設定することが困難である部分
  • 常時使用されることが想定されないもの

どのような事例でこれらの部分が発生し、

計算方法はどのようになるのか、具体例を挙げます。

 

ケース1:工場の製造ライン

最初のケースは、評価対象外となる部分が存在する場合です。

建物のイメージは以下の平面図(概形)の通りです。

評価対象外のケーススタディ1

  • 確認申請書第四面の用途:工場
  • 用途区分コード:08340
  • 適用するモデル建物:工場モデル

この場合、工場(電子部品の製造ライン)が

「工場の生産ライン(物品を製造するための室)」に該当し、

モデル建物法で評価対象外となる部分となります。

工場の生産ラインが「標準的な使用条件を設定することが困難である部分」

に該当することが、この取り扱いの理由です。

 

モデル建物法の計算上の扱いは以下のとおりです。

  • 計算対象床面積から工場(600㎡)は除かれる
  • 工場に設置される設備機器も評価対象外となる

工場の生産ラインと機能的に切り離せない通路等も、計算対象外部分となります。

どのような部分までが評価対象外となるのかは、審査機関により判断が分かれる可能性があります。

判断に迷う部分がある場合は、申請前に審査機関にご相談されることをお勧めします。

 

ケース2:冷凍庫

次のケースも、評価対象外となる部分が存在するケースです。

建物のイメージは以下の平面図(概形)の通りです。

評価対象外のケーススタディ2

  • 確認申請書第四面の用途:物品販売業を営む店舗
  • 用途区分コード:08440
  • 適用するモデル建物:大規模物販モデル

この場合、冷凍庫が「冷凍室」に該当し、

モデル建物法で評価対象外となる部分となります。

冷凍庫が「標準的な使用条件を設定することが困難である部分」

に該当することが、この取り扱いの理由です。

 

モデル建物法の計算上の扱いは以下のとおりです。

  • 計算対象床面積から冷凍庫(150㎡)は除かれる
  • 冷凍庫に設置される設備機器も評価対象外となる

冷凍庫、冷蔵庫、定温室を評価対象外となる条件としては、

「室全体が冷凍庫、冷蔵庫、定温庫である」ことが挙げられます。

室の一部に冷蔵庫があっても、その室は評価対象外とはなりません。

判断に迷う部分がある場合は、申請前に審査機関にご相談されることをお勧めします。

 

ケース3:機械換気代替の冷房設備

次のケースは、評価対象外となる設備が存在するケースです。

設備の系統イメージは、以下の図の通りです。

空調按分ケース②

  • 確認申請書第四面の用途:事務所
  • 用途区分コード:08470
  • 適用するモデル建物:事務所モデル

この場合、サーバー室の冷房設備は、

「機械換気による排熱を代替する冷房設備」に該当し、

モデル建物法で評価対象外となる設備となります。

排熱を代替する冷房設備が「標準的な使用条件を設定することが困難である部分」

に該当することが、この取り扱いの理由です。

 

モデル建物法の計算上の扱いは以下のとおりです。

  • サーバー室の冷房設備は評価対象外となる
  • サーバー室は空調対象範囲から除外される

 

機種名称 室外機・室内機の区分 台数 定格冷房能力 設置場所
PAC-1 室外機(空調熱源) 1 20.0 kW 屋外に設置
 PAC-1-1 室内機 2 6.0 kW 事務室(事務所モデル)
 PAC-1-2 室内機 1 4.0 kW サーバー室(換気代替の室内機のため、計算対象外)

例えば、空調設備の系統が上の表の通りである場合、

モデル建物法で入力をする空調熱源(室外機)の台数を按分します。

  • 事務所モデル:約 0.75 台【 ( 6.0 kW × 2 台 ) / ( 6.0 kW × 2 台 + 4.0 kW ) 】
  • 計算対象外 :約 0.25 台【 4.0 kW / ( 6.0 kW × 2 台 + 4.0 kW ) 】

 

このことについて詳しく知りたい方は、こちらの記事でご確認いただけます。

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空調熱源の台数按分とは

 

なお、冷凍庫・冷蔵庫・定温室を評価対象外となる条件として、

「室全体が冷凍庫、冷蔵庫、定温庫である」ことが挙げられます。

室の一部に冷蔵庫があっても、その室は評価対象外とはなりません。

判断に迷う部分がある場合は、申請前に審査機関にご相談されることをお勧めします。

 

ケース4:非常用の照明設備

最後のケースも、評価対象外となる設備が存在するケースです。

設備の配置イメージは、以下の平面図の通りです。

評価対象外のケーススタディ3

  • 確認申請書第四面の用途:事務所
  • 用途区分コード:08470
  • 適用するモデル建物:事務所モデル

この場合、非常用照明は、

「安全性確保のための照明設備(非常時のみ点灯する非常灯等)」に該当し、

モデル建物法で評価対象外となる設備となります。

非常用照明が「常時使用されることが想定されないもの」

に該当することが、この取り扱いの理由です。

 

モデル建物法の計算上の扱いは以下のとおりです。

  • 非常用照明は評価対象外となる照明設備となる
  • 事務室の他の冷凍庫に設置される設備機器も評価対象外となる

この他、誘導灯も評価対象外となる設備に該当します。

 

まとめ

今回は、評価対象外となる部分・設備が発生する事例を、ケーススタディで解説しました。

  • 標準的使用条件を設定できないもの、常時使用されないものが評価対象外
  • 工場の生産ラインや冷蔵室・冷凍室は、評価対象外となる部分に該当する
  • 排熱を代替する冷房設備や非常用照明は、評価対象外となる設備に該当する
  • 判断に迷う場合は、審査機関に相談することが推奨される

次回は、非住宅の照明設備の評価方法について解説します。

お楽しみに!

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