照明設備の性能を向上させる方法は?モデル建物法の工夫を省エネ判定員が解説

2024年4月、大規模非住宅建築物の省エネ基準が引き上げになりました。

これを先駆けとして、2030年までの間に段階的に省エネ基準が引き上げになります。

 

従来通りの計算方法では、引き上げ後の基準に適合しない場合もあります。

今回は、そのような事態に対峙した際の対策を紹介します。

 

この記事を読むと、性能向上につながる評価項目について知ることができます。

性能向上につながる評価項目について理解して、省エネ基準の引き上げに備えましょう。

非住宅建築物の省エネ基準の引き上げ

冒頭でお話しした省エネ基準の引き上げについて、簡単にご紹介します。

2024年4月に引き上げになった省エネ基準は、以下の表のとおりです。

建築物の規模 建築物の用途 改正前のBEI基準(~2024/3/31) 改正後のBEI基準(2024/4/1~)
大規模(2,000㎡以上) 工場等 1.0以下 0.75以下
事務所等、学校等、ホテル等、百貨店等 0.80以下
病院等、飲食店等、集会所等 0.85以下
中規模(300㎡以上) すべての用途共通 1.0以下(2026年度、引き上げ予定)

現状は大規模非住宅(2,000㎡以上)に限り、基準が引き上げになっています。

2026年度には、中規模非住宅の省エネ基準も引き上げとなる予定です。

詳しくは、別の記事でご紹介する予定です。

 

BEIについて知りたい方は、こちらの記事でご確認いただけます。

関連記事

近年、省エネ性能の高い建築物が大きな注目を集めています。 今回は、省エネ性能の1つである一次エネルギー消費量について解説します。   この記事を読むと、一次エネルギー消費量とは何か? 一次エネルギー消費量の[…]

一次エネルギーとは

照明設備の性能向上につながる評価項目

モデル建物法において、照明設備の性能向上につながる評価項目は、以下の表のとおりです。

  • 評価対象室の高さ(室指数)
  • 省エネ制御(在室検知・明るさ・タイムスケジュール)
  • 初期照度補正機能

これらの項目を評価することにより、照明設備のエネルギー消費を少なく見込むことができます。

項目を評価する際は、申請図面への情報明示が必要になることをご留意ください。

室の高さ(室指数)

同じ照明器具が設置されていても、室の形状によって内部の明るさが変化する場合があります。

このように、評価対象室の形状をある程度反映することで、

照明器具のエネルギー消費を少なく見込むための項目が室指数です。

 

モデル建物法では、室の高さを入力することにより、室の形状を計算に反映することができます。

主な入力ルールは、以下の通りです。

  • 床面から天井面までの高さを入力する
  • 各所で高さが異なる場合は、最も小さい部分の値を入力する
  • 小数点第2位を四捨五入する

要は天井高さであるため、比較的容易に入力ができます。

そのため、省エネ性能を少し向上させたい場合などに入力することをお勧めします。

省エネ制御

評価対象室に設置されている照明器具の制御方式により、

照明器具のエネルギー消費を少なく見込むための項目が省エネ制御になります。

例えば、室内の人の有無によって明るさを自動で調整する照明器具がこれに該当します。

 

省エネ制御は以下の3種類を評価することができます。

  • 在室検知制御
  • 明るさ検知制御
  • タイムスケジュール制御

 

それぞれの制御を評価するための条件を以下の表にまとめます。

在室検知制御

適用条件 補足
下限調光方式 連続調光タイプの人感センサの信号に基づき自動で下限調光または点滅する方式
点滅方式 以下のいずれかに該当する方式
・ 熱線式自動スイッチによって回路電流を通電/遮断することにより自動で点滅する方式
・ 点滅タイプの人感センサの制御信号に基づき自動で点滅する方式
・ 器具に内蔵された点滅タイプの人感センサの制御信号に基づき自動で点滅する方式
減光方式 以下のいずれかに該当する方式
・ 段調光タイプの人感センサの制御信号に基づき自動で減光する方式
・ 器具に内蔵された段調光タイプの人感センサの制御信号に基づき自動で減光する方式

明るさ検知制御

適用条件 補足
調光方式 連続調光タイプの明るさセンサの制御信号に基づき自動で調光する方式
調光方式(自動制御ブラインド併用) 連続調光タイプの明るさセンサの制御信号に基づき自動で調光し、自動制御ブラインドを併用する方式
点滅方式 以下のいずれかに該当する方式
・ 連続調光タイプの明るさセンサの制御信号に基づき自動で点滅する方式
・ 自動点滅器の明るさ検知によって回路電流を通電/遮断することにより自動で点滅する方式
・ 熱線式自動スイッチ(明るさセンサ付)の明るさ検知によって回路電流を通電/遮断することにより自動で点滅する方式

タイムスケジュール制御

適用条件 補足
減光方式 予め設定された時間に応じて照明器具を減光する方式
点滅方式 予め設定された時間に応じて照明器具を点滅する方式

いずれも、手動スイッチによるものではなく、自動で制御をするものに限られます。

住宅の省エネ計算とは異なり、室単位ではなく、器具単位で省エネ制御の有無を設定することもご留意ください。

初期照度補正機能

「初期照度補正機能」というのは、定格光束に保守率を乗じた光束で点灯を開始して、

その光束を保つ機能のことを言います。

「光束」とは照明器具から発せられる光の量を示すため、

ざっくりまとめると、照明器具から発する光の量を保守率を考慮した値で保つ機能、と言えます。

 

判断基準は、以下の表のとおりです。

適用条件 補足
タイマ方式(LED) LED 照明器具を対象とした内蔵タイマにより光束を一定に保つ方式
タイマ方式(蛍光灯) 蛍光灯器具を対象とした内蔵タイマにより光束を一定に保つ方式
センサ方式(LED) LED 照明器具を対象とした明るさセンサを用いて光束を一定に保つ方式
センサ方式(蛍光灯) 蛍光灯器具を対象とした明るさセンサを用いて光束を一定に保つ方式

まとめ

今回は、モデル建物法を活用した省エネ計算において、

照明設備の性能向上につながる評価項目を解説しました。

  • 室の高さ(室指数)、省エネ制御、初期照度補正機能の3種類の評価項目が存在する
  • 室の高さは、最も低い部分の天井高さを入力する
  • 省エネ制御、初期照度補正機能は条件を満たす器具のみを評価することができる
  • 省エネ制御、初期照度補正機能は自動で明るさ等を制御するものに限られる

省エネ計算の依頼はたいら建築相談所へ

省エネ計算で不明な点・不安な点がございましたら、たいら建築相談にご相談ください。

以下の料金【※一例】で、省エネ計算を承ります。

  • 戸建住宅(外皮計算・一次エネ計算):6万円~
  • 共同住宅(外皮計算):5万円~
  • 非住宅(工場・倉庫):4万円~ ※モデル建物法、規模により変動
  • 非住宅(事務所・物販店舗等):6万円~ ※モデル建物法、規模により変動
  • 非住宅(病院・福祉施設等):7万円~ ※モデル建物法、規模により変動

以下のサイトから連絡を取ることができます。

まずはお気軽にお声がけください。

次回の記事

次回は、住宅の空調設備(冷暖房設備)の評価方法について解説します。

お楽しみに!

照明設備の性能向上
最新情報をチェックしよう!