2025年の10月1日、モデル建物法(小規模版)が現行版の
一次エネルギー消費量計算プログラムとして使用できるようになりました。
モデル建物法(小規模版)は、まだよく知らない人も多いと思います。
この計算方法は、床面積が300㎡未満の小規模非住宅建築物の省エネ計算において、最も簡易な計算方法となります。
この記事を読むと以下の内容を知ることができます。
- モデル建物法(小規模版)で評価できる設備機器の種類
- モデル建物法(小規模版)における空調設備の評価の特徴
- モデル建物法(小規模版)における照明設備の評価の特徴
- モデル建物法(小規模版)における給湯設備の評価の特徴
モデル建物法(小規模版)の特徴を押さえて、2025年度以降の小規模非住宅の省エネ計算に活用しましょう。
モデル建物法(小規模版)とモデル建物法(通常版)の違いについてはこちらの記事でご確認いただけます。
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モデル建物法(小規模版)で評価できる設備機器の種類
モデル建物法(小規模版)で評価できる設備機器の種類は、以下の通りです。
- 所定の空調熱源
- 便所・厨房の換気設備
- 評価対象室の照明設備
- 評価対象用途の給湯設備
なお、これらの設備機器の評価方法については、「モデル建物法(小規模版)入力マニュアル」に記載されています。
出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「モデル建物法(小規模版)入力マニュアル」
所定の空調熱源
モデル建物法(通常版)と同様、モデル建物法(小規模版)でも空調熱源を評価します。
詳しくは後程ご説明しますが、モデル建物法(通常版)より評価できる空調熱源の種類が少なくなります。
空調熱源について知りたい方は、こちらの記事でご確認いただけます。
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便所・厨房の換気設備
モデル建物法(小規模版)では、便所と厨房の換気設備を評価します。
ただし、厨房の換気設備はモデル建物が「福祉施設モデル」と「飲食店モデル」の場合に限定されます。
モデル建物法(通常版)では評価される「機械室」「電気室」「駐車場」の換気設備は評価対象外です。
また、単相の換気設備はモデル建物法(通常版)と同様に評価対象外とすることができます。
単相の換気扇のみが設置される場合、換気設備の評価は省略できます。
モデル建物について知りたい方はこちらの記事でご確認いただけます。
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評価対象室の照明設備
モデル建物法(通常版)と同様、モデル建物法(小規模版)でも評価対象室の照明設備を評価します。
詳しくは後程ご説明しますが、モデル建物法(通常版)より評価対象室の種類は少なくなります。
評価対象用途の給湯設備
モデル建物法(通常版)と同様、モデル建物法(小規模版)でも評価対象用途の給湯設備を評価します。
詳しくは後程ご説明しますが、モデル建物法(通常版)よりモデル建物毎の評価対象用途の種類が限定されます。
モデル建物法(小規模版)における空調設備の評価の特徴
モデル建物法(小規模版)における空調設備の評価の特徴は、以下の通りです。
- 評価できる空調熱源の種類が通常版より少ない
- 定格消費電力・定格燃料消費量は評価しないこともできる
評価できる空調熱源の種類が通常版より少ない
モデル建物法(小規模版)では、冷房は6種類、暖房は10種類の熱源を選択することができます。
他の種類の機器も評価することはできますが、審査機関の承認を得る必要があります。
モデル建物法(通常版)では、冷房は17種類、暖房は19種類の熱源を選択できるため、
熱源の選択肢はおおむね1/2から1/3に減少することになります。
しかしながら、モデル建物法(小規模版)で選択できないこれらの機器は、
床面積が300㎡未満の小規模非住宅建築物に設置されることはほとんどありません。
選択肢が減ることに対する心配はあまりしなくてもよいと思います。
定格消費電力・定格燃料消費量は評価しないこともできる
モデル建物法(小規模版)において、空調熱源は「様式SC-1 空調熱源」入力シートで評価します。
出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「モデル建物法(小規模版)入力マニュアル」
この「様式SC-1 空調熱源入力シート」では、定格消費電力と定格燃料消費量の入力の有無を選択することができます。
- 入力する:機器の定格消費電力と定格燃料消費量を入力する
- 入力しない:定格消費電力と定格燃料消費量の入力を省略する(規定の値で計算する)
「入力しない」を選択すると計算プログラム上で定められた既定の値を用いて計算が実行されます。
そのため、実情と乖離する危険性がある一方で、モデル建物法(通常版)より性能値の入力を減らすことができます。
手間や求められる省エネ性能などの実情を考慮して、どちらを選択するか決めましょう。
モデル建物法(小規模版)における照明設備の評価の特徴
断熱仕様入力の特徴は、以下の通りです。
- 評価対象室がモデル建物法(通常版)より少ない
- 照明器具の配置や性能を評価しないこともできる
評価対象室がモデル建物法(通常版)より少ない
モデル建物法(小規模版)では限られた評価対象室の照明設備のみを評価します。
モデル建物毎の評価対象室(抜粋)は以下の表のとおりです。
モデル建物 | モデル建物法(小規模版)の評価対象室 | モデル建物法(通常版)の評価対象室 |
事務所モデル | 事務室 | 事務室 |
クリニックモデル | 診察室 | 診察室、待合室 |
福祉施設モデル | 個室 | 個室、診察室、ロビー |
幼稚園モデル | 教室 | 教室、事務室・職員室、ロビー |
多くのモデル建物において、モデル建物法(小規模版)の方が評価対象室が少なくなります。
このことより、モデル建物法(通常版)より照明器具の入力手間は減少します。
照明器具の配置や性能を評価しないこともできる
モデル建物法(小規模版)において、空調熱源は「様式SE 照明」入力シートで評価します。
出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「モデル建物法(小規模版)入力マニュアル」
この「様式SE 照明入力シート」では、照明器具の配置と消費電力、各種制御の評価の有無を選択することができます。
- 照明器具の仕様を指定する:照明器具の配置と消費電力、各種制御について入力する
- 主たる照明器具の種類を選択する:照明器具の種類のみを選択する
「主たる照明器具の種類を選択する」を選択すると、以下の3つの選択肢から種類を選択するだけで照明器具の評価が完結します。
- LED(評価対象室の照明器具がすべてLEDの場合に選択する)
- 蛍光灯(評価対象室の照明器具がすべてLEDか蛍光灯の場合に選択する)
- 白熱灯(評価対象室の照明器具に白熱灯が含まれる場合に選択する)
①から③の順で、省エネ性能が高いことになります。
そのため、性能の低い種類の照明器具が1つでも存在する場合、性能の低い種類を選ぶことがポイントです。
計算プログラム上で定められた既定の値を用いて計算が実行されるため、
実情と乖離する危険性がある一方で、モデル建物法(通常版)より性能値の入力を減らすことができます。
手間や求められる省エネ性能などの実情を考慮して、どちらを選択するか決めましょう。
モデル建物法(小規模版)における給湯設備の評価の特徴
断熱仕様入力の特徴は、以下の通りです。
- 評価対象用途がモデル建物法(通常版)より少ない
- 給湯機の加熱能力や保温仕様などを評価しないこともできる
評価対象用途がモデル建物法(通常版)より少ない
モデル建物法(小規模版)では限られた評価対象用途に使用する給湯機を評価します。
モデル建物毎の評価対象室(抜粋)は以下の表のとおりです。
モデル建物 | モデル建物法(小規模版)の評価対象用途 | モデル建物法(通常版)の評価対象用途 |
事務所モデル | 洗面・手洗い | 洗面・手洗い、浴室、厨房 |
クリニックモデル | 洗面・手洗い | 洗面・手洗い、浴室、厨房 |
福祉施設モデル | 浴室 | 洗面・手洗い、浴室、厨房 |
幼稚園モデル | 洗面・手洗い | 洗面・手洗い、浴室、厨房 |
多くのモデル建物において、モデル建物法(小規模版)の方が評価対象用途が少なくなります。
このことより、モデル建物法(通常版)より給湯設備の入力手間は減少します。
給湯機の加熱能力や保温仕様などを評価しないこともできる
モデル建物法(小規模版)において、給湯機は「様式SF 給湯」入力シートで評価します。
出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「モデル建物法(小規模版)入力マニュアル」
この「様式SF 給湯入力シート」では、給湯機の数や加熱能力、定格消費電力、保温仕様などの評価の有無を選択することができます。
- 指定する:定格加熱能力、定格消費電力、定格燃料消費量、保温仕様、節湯器具を入力する
- 指定しない(主たる給湯熱源の種類のみを指定する):主たる給湯熱源の種類のみを選択する
「指定しない」を選択すると、以下の6つの選択肢から種類を選択するだけで照明器具の評価が完結します。
- 下記以外(または未定)
- 電気温水器
- ガス従来型給湯機
- 石油従来型給湯機
- ガスまたは石油潜熱回収型給湯機
- 電気ヒートポンプ給湯機
これらの種類を背託する給湯機が、「主たる給湯熱源」となります。
1つの建物に複数の給湯機がある場合は、以下のルールに基づいて主たる給湯機を選定します。
- 評価対象に使用する給湯機の内、最も加熱能力の高い給湯機を主たる給湯機とする
- 複数の給湯熱源がある場合は、効率の低い機種を優先的に入力対象とする
先ほど紹介した給湯熱源の内、番号が小さいものほど、効率が低い機種となります。
例えば、電気温水器とガス従来型給湯機の両方の設置がある場合、電気温水器を優先的に選択します。
空調設備や照明設備と同様、計算プログラム上で定められた既定の値を用いて計算が実行されるため、
実情と乖離する危険性がある一方で、モデル建物法(通常版)より性能値の入力を減らすことができます。
手間や求められる省エネ性能などの実情を考慮して、どちらを選択するか決めましょう。
まとめ
今回は、モデル建物法(小規模版)の特徴(設備編)について解説しました。
- 評価対象となる機器の種類がモデル建物法(通常版)より少ない
- 機器の性能値を評価しないで計算をすることもできる
- 性能値を評価しない場合、代表的な仕様を選択する
- 代表的な仕様を選択する際、性能の低いものを選択しなくてはならない
省エネ計算の依頼はたいら建築相談所へ
省エネ計算で不明な点・不安な点がございましたら、たいら建築相談にご相談ください。
以下の料金【※一例】で、省エネ計算を承ります。
- 戸建住宅(外皮計算・一次エネ計算):6万円~
- 共同住宅(外皮計算):5万円~
- 非住宅(工場・倉庫):4万円~ ※モデル建物法、規模により変動
- 非住宅(事務所・物販店舗等):6万円~ ※モデル建物法、規模により変動
- 非住宅(病院・福祉施設等):7万円~ ※モデル建物法、規模により変動
以下のサイトから連絡を取ることができます。
- たいら建築相談所 :コンタクト (tairasoudan.com)
- ココナラ :たいら建築相談所_省エネ特化の一級建築士 (coconala.com)
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- クラウドワークス :たいら建築相談所 (crowdworks.jp)
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次回は、モデル建物法の通常版と小規模版の入力内容による計算結果の違いについて解説します。
お楽しみに!