前回の記事では、住宅の省エネ基準達成を確認する方法である仕様基準について解説しました。
容易に省エネ基準への適合を確認できる一方、具体的な性能値を知ることができないなど、
メリット・デメリットについてご理解いただけましたでしょうか。
今回の記事では、仕様基準の内、断熱材の基準について解説します。
- 断熱材の仕様基準の達成方法
- 断熱材の基準が適用される部位
- お勧めの達成方法
仕様基準の断熱材基準を理解して、申請手続きに活用していきましょう。
断熱の基準が適用される部位
住宅の仕様基準は、平成28年告示第266号で定められています。
告示の中では、断熱の基準が適用されることを「断熱構造とする」と言っています。
断熱構造とする部位は、以下の通りです。
- 屋根(天井)
- 外壁
- 外気に接する床
- その他の床
- 土間床等の外周部分の基礎壁
一方で、断熱構造としなくてもよい部分についても定められています。
- イ 居室に面する部位が断熱構造となっている物置、車庫又はこれらと同様の空間の居室に面する部位以外の部位
- ロ 外気に通じる床裏、小屋裏又は天井裏に接する外壁
- ハ 断熱構造となっている外壁から突き出した軒、袖壁又はベランダ
- ニ 玄関、勝手口その他これらに類する部分における土間床部分
- ホ 断熱措置がとられている浴室下部における土間床部分
- ヘ 単位住戸(基準省令第1条第1項第2号イ(1)に規定する単位住戸をいう。以下同じ。)の外皮が当該単位住戸と同様の熱的環境の空間に接している場合における当該外皮
浴室に断熱措置がとられていれば、浴室下部の基礎壁は断熱構造としなくてよいなど、
条件により断熱構造としなくてよい部分もあります。
これらを図示すると、以下のようになります。
出展:国土交通省 建築物省エネ法のページ 資料ライブラリ―「住宅の省エネルギー基準と評価方法2024【戸建住宅版】」
断熱基準への適合方法
断熱構造とする部位に対する基準は、以下の2種類です。
いずれかの基準を満たしてください。
- 熱貫流率の基準
- 熱抵抗の基準
熱貫流率の基準
断熱構造とする部位の熱貫流率を計算して、それが告示の基準値より性能が高いことを確認します。
熱貫流率について知りたい方は、こちらの記事でご確認いただけます。
「熱貫流率」という言葉を聞いたことはありますか。 熱貫流率は、住宅の省エネ性能や外皮性能を評価するために、 欠かせない要素となっています。 この記事を読むと、住宅の外壁・屋根・床等の部位における、 […]
熱貫流率の具体的な基準は、平成28年告示第266号で定められています。
出展:国土交通省 建築物省エネ法のページ 建築物省エネ法最新の法令
参考として、木造戸建て住宅の事例を以下の表に示します。
部位 | 地域区分1及び2 | 地域区分3 | 地域区分4 | 地域区分5、6及び7 | 地域区分8 |
屋根又は天井 | 0.17 以下 | 0.24 以下 | 0.24 以下 | 0.24 以下 | 0.99 以下 |
壁 | 0.35 以下 | 0.53 以下 | 0.53 以下 | 0.53 以下 | |
外気に接する床 | 0.24 以下 | 0.24 以下 | 0.34 以下 | 0.34 以下 | |
その他の床 | 0.34 以下 | 0.34 以下 | 0.48 以下 | 0.48 以下 | |
土間床等の外周部の基礎壁(外気に接する) | 0.27 以下 | 0.27 以下 | 0.52 以下 | 0.52 以下 | |
土間床等の外周部の基礎壁(その他) | 0.71 以下 | 0.71 以下 | 1.38 以下 | 1.38 以下 |
表中の熱貫流率より設計値が小さい場合、仕様基準に適合していることになります。
既に部位別の熱貫流率を計算した実績があるのならば、比較してみることをお勧めします。
熱抵抗の基準
断熱構造とする部位の断熱材の熱抵抗を計算して、告示の基準より性能が高いことを確認します。
熱抵抗(㎡K/W)は厚さ(m)÷熱伝導率(W/mK)で計算できます。
例えば、高性能グラスウール断熱材16Kで、熱伝導率が0.038 W/mK、厚さが105㎜となる場合、
熱抵抗=0.105(m)÷0.038(W/mK)=2.76(㎡K/W) となります。
熱抵抗の具体的な基準も、平成28年告示第266号で定められています。
参考として、木造(軸組工法)戸建て住宅の事例を以下の表に示します。
部位 | 地域区分1及び2 | 地域区分3 | 地域区分4 | 地域区分5、6及び7 | 地域区分8 |
屋根(充填断熱) | 6.6 以上 | 4.6 以上 | 4.6 以上 | 4.6 以上 | 0.96 以上 |
天井(充填断熱) | 5.7 以上 | 4.0 以上 | 4.0 以上 | 4.0 以上 | 0.78 以上 |
壁(充填断熱) | 3.3 以上 | 2.2 以上 | 2.2 以上 | 2.2 以上 | |
外気に接する床(充填断熱) | 5.2 以上 | 5.2 以上 | 3.3 以上 | 3.3 以上 | |
その他の床(充填断熱) | 3.3 以上 | 3.3 以上 | 2.2 以上 | 2.2 以上 | |
土間床等の外周部の基礎壁(外気に接する) | 3.5 以上 | 3.5 以上 | 1.7 以上 | 1.7 以上 | |
土間床等の外周部の基礎壁(その他) | 1.2 以上 | 1.2 以上 | 0.5 以上 | 0.5 以上 |
表中の熱抵抗より設計値が大きい場合、仕様基準に適合していることになります。
断熱材しか判定に用いることができませんが、熱貫流率より容易に仕様基準への適合を確認できます。
まとめ
今回は、住宅の省エネ基準を達成する容易な方法である仕様基準の断熱材の仕様について解説しました。
- 仕様基準では断熱構造とする部分を定められている
- 断熱措置のある浴室下部の土間床部分など、断熱構造としなくてもよい部分も存在する
- 断熱材の具体的仕様の基準は熱貫流率と熱抵抗の2種類が存在する
- 断熱材のみで判定を行う分、熱抵抗の基準の方が容易に基準適合を確認できる
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次回の記事
次回は、住宅の省エネ仕様基準の断熱仕様の確認事例(熱貫流率・熱抵抗)について解説をします。
お楽しみに!