住宅の省エネ仕様基準の断熱仕様の確認方法は?事例を踏まえて省エネ判定員が解説

前回の記事では、住宅の仕様基準における断熱材の基準について解説しました。

断熱構造とする部位や2種類の判断基準など、断熱材の基準についてご理解いただけましたでしょうか。

今回の記事では、ケーススタディを交えて断熱材の仕様基準への適合方法について解説します。

仕様基準の断熱材基準を理解して、申請手続きに活用していきましょう。

断熱材の仕様基準の達成方法

断熱材の仕様基準の達成方法は、以下の2種類です。

仕様基準を達成したい場合、いずれかの基準を満たしてください。

  • 熱貫流率の基準
  • 熱抵抗の基準

熱貫流率の基準

断熱構造とする部位の熱貫流率を計算して、それが告示の基準値より性能が高いことを確認します。

熱貫流率について知りたい方は、こちらの記事でご確認いただけます。

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熱貫流率とは

熱抵抗の基準

断熱構造とする部位の断熱材の熱抵抗を計算して、告示の基準より性能が高いことを確認します。

熱抵抗(㎡K/W)は厚さ(m)÷熱伝導率(W/mK)で計算できます。

熱抵抗の基準確認のケーススタディ①

熱抵抗の基準確認のケーススタディです。条件は、以下の通りとします。

  • 計画地の地域区分:6地域
  • 住宅の構造:木造(軸組工法)
  • 検討する部位:屋根(充填断熱)
  • 屋根断熱の種類:吹付硬質ウレタンフォームA種3
  • 断熱材の熱伝導率:0.040 W/mK
  • 断熱材の厚さ:200 ㎜

まずは地域区分と検討部位から、熱抵抗の基準を確認します。

仕様基準における、木造(軸組工法)戸建て住宅の熱抵抗の基準は下表のとおりです。

ちなみに、これらの基準は平成28年告示第266号で定められています。(単位:㎡K/W)

部位 地域区分1及び2 地域区分3 地域区分4 地域区分5、6及び7 地域区分8
屋根(充填断熱) 6.6 以上 4.6 以上 4.6 以上 4.6 以上 0.96 以上
天井(充填断熱) 5.7 以上 4.0 以上 4.0 以上 4.0 以上 0.78 以上
壁(充填断熱) 3.3 以上 2.2 以上 2.2 以上 2.2 以上
外気に接する床(充填断熱) 5.2 以上 5.2 以上 3.3 以上 3.3 以上
その他の床(充填断熱) 3.3 以上 3.3 以上 2.2 以上 2.2 以上
土間床等の外周部の基礎壁(外気に接する) 3.5 以上 3.5 以上 1.7 以上 1.7 以上
土間床等の外周部の基礎壁(その他) 1.2 以上 1.2 以上 0.5 以上 0.5 以上

表より、今回の事例における屋根の熱抵抗の基準は「4.6 以上」であることがご確認いただけます。

この基準を、計画している断熱材と厚さで満たせているかどうか、確認をします。

断熱材の熱抵抗は、厚さ(m)÷熱伝導率(W/mK)で計算できます。

今回の事例において、熱抵抗は 0.2(m)÷0.040(W/mK)= 5.0(㎡K/W)で計算ができます。

設計の熱抵抗=5.0(㎡K/W)≧ 4.6(㎡K/W)=熱抵抗の基準となるため、

この屋根断熱は仕様基準に適合していることがご確認いただけます。

熱抵抗の基準確認のケーススタディ②

引き続き、熱抵抗の基準確認のケーススタディです。条件は、以下の通りとします。

  • 計画地の地域区分:4地域
  • 住宅の構造:木造(軸組工法)
  • 検討する部位:外壁(充填断熱)
  • 外壁断熱の種類:高性能グラスウール断熱材14K
  • 断熱材の熱伝導率:0.038 W/mK
  • 断熱材の厚さ:80 ㎜

まずは地域区分と検討部位から、熱抵抗の基準を確認します。

前述の表より、今回の事例における屋根の熱抵抗の基準は「2.2 以上」であることがご確認いただけます。

この基準を、計画している断熱材と厚さで満たせているかどうか、確認をします。

熱抵抗は 0.080(m)÷0.038(W/mK)= 2.1(㎡K/W)で計算ができます。

設計の熱抵抗=2.1(㎡K/W)≦ 2.2 (㎡K/W)=熱抵抗の基準となるため、

この外壁断熱は仕様基準に適合していないことがご確認いただけます。

熱貫流率の基準確認のケーススタディ

今度は、熱貫流率の基準確認のケーススタディです。

条件は、前述の熱抵抗のケーススタディ②と同じ断熱材とします。

  • 計画地の地域区分:4地域
  • 住宅の構造:木造(軸組工法)
  • 検討する部位:外壁(充填断熱)
  • 外壁断熱の種類:高性能グラスウール断熱材14K
  • 断熱材の熱伝導率、厚さ:0.038 W/mK、厚さ80㎜
  • 断熱材の屋内側の被覆:石膏ボードGB-R、厚さ12.5㎜
  • 断熱材の屋外側の被覆:パーティクルボード、厚さ9㎜

まずは地域区分と検討部位から、熱貫流率の基準を確認します。

仕様基準における、木造(軸組工法)戸建て住宅の熱抵抗の基準は下表のとおりです。

ちなみに、これらの基準は平成28年告示第266号で定められています。(単位:W/㎡K)

部位 地域区分1及び2 地域区分3 地域区分4 地域区分5、6及び7 地域区分8
屋根又は天井 0.17 以下 0.24 以下 0.24 以下 0.24 以下 0.99 以下
0.35 以下 0.53 以下 0.53 以下 0.53 以下
外気に接する床 0.24 以下 0.24 以下 0.34 以下 0.34 以下
その他の床 0.34 以下 0.34 以下 0.48 以下 0.48 以下
土間床等の外周部の基礎壁(外気に接する) 0.27 以下 0.27 以下 0.52 以下 0.52 以下
土間床等の外周部の基礎壁(その他) 0.71 以下 0.71 以下 1.38 以下 1.38 以下

表より、今回の事例における屋根の熱貫流率の基準は「0.53 以下」であることがご確認いただけます。

この基準を、計画している断熱材などの仕様で満たせているかどうか、確認をします。

今回、外壁の熱貫流率は、面積比率法で計算します。

熱貫流率の計算について知りたい方は、こちらの記事でご確認いただけます。

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熱貫流率とは

計算内容は以下の図のようになります。

断熱基準適合のケーススタディ

今回の事例において、熱貫流率は0.511(W/㎡K)で計算ができます。

設計の熱抵抗=0.511(W/㎡K)≦ 0.53(W/㎡K)=熱貫流率の基準となるため、

この外壁断熱は仕様基準に適合していることがご確認いただけます。

まとめ

今回は、住宅の仕様基準における断熱基準を達成する具体的な方法について、ケーススタディを交えて解説しました。

  • 断熱材の具体的仕様の基準は熱貫流率と熱抵抗の2種類が存在する
  • 最も容易に基準適合を確認できるのは熱抵抗の基準
  • 熱抵抗で基準適合を確認できない場合でも、熱貫流率を計算することで達成できる可能性もある

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次回の記事

次回は、住宅の省エネ仕様基準の断熱仕様の確認事例(熱貫流率・熱抵抗)について解説をします。

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